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シリーズ:ユネスコエコパークで活躍する北杜のプロフェッショナル

 日本で唯一、ひとつの自治体に2つのユネスコエコパーク登録地がある北杜市。
 ユネスコエコパークは、私たちの身近な生活に溶け込んでいます。自然や生物多様性、伝統文化を保護するとともに、次世代へと継承するため、様々な取り組みが広がっています。
 そんな、北杜のプロフェッショナルをシリーズでご紹介します。

 Vol.4
 北杜市甲武信ユネスコエコパーク地域連絡会
 会長 五味 力さん

五味さんはこれまでどんな活動をしてきましたか。

 金属加工を45年近く行ってきました。5、6年前からジビエの加工場を始めています。

甲武信ユネスコエコパークに選ばれたときの感想は

 私は狩猟を趣味でやっておりますから、自然に親しむ機会は一般の方たちよりも年間を通して携わる機会は多いと思います。茅ヶ岳から金峰山、瑞牆山というのがエリアで、その山で山菜採りやキノコ採りだとかをするのでしょっちゅう山に入っています。

瑞牆山

多少手が入れば昔のように復活できるか?

 人工林のカラ松が植えられたことで、昔の植物が姿を消してしまったと聞いています。人工林が多くなってしまったので、昔のような自然に戻すのは難しいですね。1,500~1,600mくらいの原生林がすべて人工林に変わっているので。

山に入るのは趣味と言っていましたが、よく山に入っているのですか?

 キノコを採りに行ったり、山菜取りに行ったりといったような状況ですね。昔は釣りにも行きましたけど、登山的なこともして、金峰山や瑞牆山にもちょいちょい登っていました。
 子供のころから山が好きで、山で取れた山菜やキノコは、自分たちで食べるより、みんなに配っていました。

茅ヶ岳

五味さん、財産区の会長もやられていますね。山を守るというのもあると思いますが、これからどういう風に山を保全したらいいですか?

 金ヶ岳山外二字恩賜林保護財産区管理会の会長などもやっていますが、日本国内でも海外からの材木が入りにくくなっている状況です。
 高度成長の時に植えて50年ほど経っている、伐採をする時期になっているという状況で、あちこちで広い範囲で木の伐採をしている。
 人工林の木がかなり大きく生長したことで、地面に陽が届かない、だから草も生えていないような状況が多いです。適度な林地整備が必要ですね。
 草が生えていないということは、動物の特に鹿に餌がない。鹿や動物の隠れ家的な場所もなくなってしまったのです。
 動物たちは、人間の手の入らない危ない場所の原生林に移動しており、高く危険な場所で実を食べている。通常の生息範囲よりはかなり上のほうで生息しています。

大きくなったカラマツなどは、材木として流通しているのですか?

 今、材木が足りないというような状況で、私の担当している金ヶ岳山外二字恩賜林保護財産区も造林の伐採をしています。
 この敷地内には、「千本桜公園」があるのですが、ソメイヨシノなどがてんぐ巣病で枯れてきているので、その千本桜の名所を復活させようというプロジェクトを進めているところです。毎年植林をしています。

ユネスコエコパークの会議で、こういうことをやろうみたいな話しはありますか?

 昨年(令和4年)の6月19日に地域連絡会の活動を始めたばかりで、まずはユネスコエコパークというのは何かというのを今年は勉強しました。その中で来年何をしようかというのを12月に1回話し、3月に大方決まりました。
 1つの案ですが、塩川で塩作りをやるという話が出ています。
 今年の春だったかな、山菜を取りに行って増富のヨッシャ―の湯のところで昼食をとっていたら、珍しいトンボが孵化していたようで、観察している方が、ここにしかいないトンボだと言っていました。
 また、日本の蝶類を研究している方たちが来たときに、塩川ダムの近くにゴマシジミがいるということで見学に来ていました。

甲武信ユネスコエコパークの保全や周知など大変になりますね。

 やらないといけないことはたくさんあるけど、どこから手を付けていいのか。まずはポロシャツとシールを作って、活動をPRしていきたいと思います。

活動を通して子供たちに「この山はこうだよ」など伝えたいことは?

 自然的な体験をしないといけないと思います。例えばハイキングに行って、「山で迷子になった場合、方向を見るには山の木を見ればわかる」というような話しをして、「木は必ず南の枝が太い、日当たりの良いほうがね」と紹介するのもいいですね。
 先日、孫と一緒に山に入っていた時のこと、「おじいちゃん、この糞は鹿でも猪でもない。熊の糞だよね」と言われた。一緒に山に入るようになって鹿の糞とカモシカの糞もわかるようになっていました。

 どこもみんな自然にかかわるところは同じだと思いますが、秋の瑞牆山の紅葉なんか素晴らしいし、春の若葉のところも素晴らしい。行ってみればそのすばらしさが分かります。と、山を熟知している五味さんが甲武信エリアを紹介してくれました。