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シリーズ:ユネスコエコパークで活躍する北杜のプロフェッショナル

 日本で唯一、ひとつの自治体に2つのユネスコエコパーク登録地がある北杜市。ユネスコエコパークは、私たちの身近な生活に溶け込んでいます。
 自然や生物多様性、伝統文化を保護するとともに、次世代へと継承するため、様々な取り組みが広がっています。
 そんな、北杜のプロフェッショナルをシリーズでご紹介します。

 Vol.3
 北杜市南アルプスユネスコエコパーク地域連絡会
 会長 古屋賢仁さん

地域連絡会としての活動の内容について教えてください

 地域の子どもたちに地域を知ってもらうため、標高887mの身近な山、「中山」に、武川中の生徒を案内することに協力しています。事前学習や登山中に現地説明したり。また、登山者に安全で、自然を保全、回復のため、倒木や登山道が傷んでいる箇所の整備にも取り組んでいます。

生徒たちに歴史的な背景についてもお話しますか?

 武川という地名の由来ですが、昔、六つの川と書いていました。六つの川は「釜無川」、「石空川」、「尾白川」、「大武川」、「小武川」、「黒沢川」で、六つの川を「むかわ」と言っていました。
 子どもたちの地域学習では、織田信長や徳川家康は歴史の中で紹介されるが、この地域にも武将がいたことや戦いがあったことは今の子どもたちは誰も知らない。戦国時代の武川衆の話をして、各地域に豪族がいて、武田信玄の配下になって武川衆として活躍したことを紹介するとびっくりします。
 ほとんどの子どもたちは外に出てしまうが、外に出てしまっても故郷の思い出を作ってもらいたくて中山への登山の案内をやっている。「皆さん、この山は何回目ですか?」と聞くと「初めて」という人がほとんどなのです。
 また、中山への愛着をもってもらおうとネームプレート付けた記念植樹も考えています。

体験的なことで子どもたちと交流はありますか?

 尾白川と大武川は、北杜市の主要な河川なので、そこの自然環境の状況の調査や水生生物の調査をやっています。尾白川は白州中学校、大武川は武川小学校で、川に入って水生昆虫などを調べます。
 また、清流のシンボルとも呼んでいるカジカの産卵場所を作ろうという声もあります。
 例えば、ハイキングや水生生物の調査など、白州や武川の学校に入学すれば、こんな勉強ができるんだということを市外の方、親御さんに認知してもらえれば、もしかしたら魅力的な学校として将来的に考えられるので、活動をいろいろな人に広く発信ができれば、移住にもつながるかもしれませんね。

ユネスコエコパークのこれからについて

 地域連絡会には文化・教育部会で地域の歴史や文化を、環境部会は直接的に環境保全を、ブランド・ツーリズム部会では登山イベントの実施や様々な取り組みを周知、広報をしています。平均年齢は60歳くらいで、若返りが必要になってきています。
 南アルプスユネスコエコパークの登録エリアで、北杜市部分だけで活動していても広がらないのが残念です。3県10市町村の全体の協議会で活動しないといけませんね。多くの皆さんに呼びかけたいと思います。

これからの課題は?

 メンバーが増えていかないということと、メンバーの高齢化でしょう。今70人位の会員登録がありますが、活動する人は限られています。中山の登山道の整備は、北杜市商工会や北杜市観光協会、地元企業などが協力してくれるから、そこそこの人数は集まるのですが、常時活動が難しくなっています。

連絡会として今後どのような活動をしていきたいですか

 令和4年度は、中学校の中山ハイキングはできなかったのですが、初めて一般の方に向けて、試験的にお金をいただいてハイキングイベントをやってみたところ、大変好評でした。
 今回初めてだったので小さく、10人の募集をかけたら2日で予約いっぱいになりました。登山しながら地域の話をしたり、武川産米のおにぎりを食べるという体験を通して、地域を感じてもらえたと思います。参加者の9割が移住してきた市民でした。
 ユネスコエコパークでは結構いろいろ情報提供できると思います。歴史もそうだし、動植物、中山山頂で360度見渡しながら、ユネスコエコパークを説明する。また、甲斐駒ヶ岳の向こう側にもユネスコエコパークでつながっているんだよとかをまとめれば、本当1つのパッケージにできるのではないかと思う。